Pontryaginの最小原理を用いた軌道生成

Pontryaginの最小原理を用いた軌道生成

Pontryaginの最小原理を用いて,Hamiltonianを最小化する軌道を解析的に求めました。 障害物は考慮せず,計算コストを小さくする軌道生成を目的とします。

Computationally Efficient Trajectory Generation for Fully Actuated Multirotor Vehiclesを参考にしています。

1. 評価関数

計算コストを下げるために,評価関数は凸関数とします。 ここでは,評価関数をjerkの2乗の時間平均

$$J=\dfrac{1}{T}\int_0^T\dddot{r}^2(t)dt$$

とします。 $T$は軌道の終端時刻であり,$0\leq t \leq T$です。

2. Hamiltonian

ここでは,$s=(s_1,s_2,s_3)=(r,\dot{r},\ddot{r})$,$u=\dddot{r}$とします。 ダイナミクスは簡単のために線形とし,対象の物理モデルは考慮しません。

$$\dot{s}=(s_2,s_3,u)$$

ステージコストと,随伴変数$\lambda=(\lambda_1,\lambda_2,\lambda_3)$を用いてHamiltonianを表現します。

$$H(s,u,\lambda)=\dfrac{1}{T}u^2+\lambda^T\dot{s}=\dfrac{1}{T}u^2+\lambda_1 s_2+\lambda_2 s_3+\lambda_3 u$$

3. Hamiltonianを最小化する$u$を求める

$$\nabla_uH(s,u,\lambda)=0$$

より,

$$\dfrac{2}{T}u+\lambda_3=0,\quad u=-\dfrac{T}{2}\lambda_3$$

となります。 随伴変数の$\lambda_3$が残っているので,随伴方程式を解いて求めていきます。

4. 随伴変数$\lambda$を求める

随伴方程式は,随伴変数の定義より $$\dot{\lambda}=-\nabla_sH(s,u,\lambda)$$ であり,これを解いて $$\dot{\lambda}=(0,-\lambda_1,-\lambda_2)$$

を満たすように$\lambda$を積分により求めると,

$$\lambda_1(t)=-\dfrac{2}{T}c_1$$

$$\lambda_2(t)=\dfrac{2}{T}(c_1t+c_2)$$

$$\lambda_3 = \dfrac{1}{T}(-c_1t^2-2c_2t-2c_3)$$

となります(積分定数は$u^*$を簡潔に書けるように選んでいます)。 この$\lambda_3$を3の$u$に代入すると,

$$u^*=\dfrac{c_1}{2}t^2+c_2t+c_3$$

となり,この入力$u^*$はHamiltonian $H(s,u,\lambda)$を最小化する入力となります。

5. 目標軌道を求める

$u^*$を積分すれば$s_3(=\ddot{r})$,$s_3$を積分すれば$s_2(=\dot{r})$,$s_2$を積分すれば$s_1(=r)$となります。

$$s_1^*(t)=\dfrac{1}{120}c_1t^5+\dfrac{1}{24}c_2t^4+\dfrac{1}{6}c_3t^3+\dfrac{1}{2}c_4t^2+c_5t+c_6$$

$$s_2^*(t)=\dfrac{1}{24}c_1t^4+\dfrac{1}{6}c_2t^3+\dfrac{1}{2}c_3t^2+c_4t+c_5$$

$$s_3^*(t)=\dfrac{1}{6}c_1t^3+\dfrac{1}{2}c_2t^2+c_3t+c_4$$

6. 目標軌道の係数を求める

初期と終端の条件,軌道時間を与えてあげると,連立方程式を解くだけでパラメータ$c_1\sim c_6$が求まります。 ここでは例として,ある位置$r_0$での静止状態から,$r_T$への静止状態に遷移することを考えます。 $$s_1(0)=r_0,\quad s_2(0)=0,\quad s_3(0)=0$$

$$s_1(T)=r_T,\quad s_2(T)=0,\quad s_3(T)=0$$

として1.5の方程式を解くと,

$$ \begin{bmatrix} c_4\\ c_5\\ c_6 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 0\\ 0\\ r_0 \end{bmatrix} $$ $$ \begin{bmatrix} c_1\\ c_2\\ c_3 \end{bmatrix} =\dfrac{1}{T^5} \begin{bmatrix} 720\\ -360T\\ 60T^2 \end{bmatrix} (r_T-r_0) $$

となりました。 軌道生成時には,まず条件を渡して$c_1\sim c_6$のパラメータを決定し,次に$s_1,s_2,s_3$の時間軌道を一意に求めるということになります。

7. 実践

$r$と$\theta$が制御できる極座標系のロボットを対象とします。 $xy$座標上の経路は考慮せず,$r$と$\theta$それぞれにおいて独立して軌道を考えます。

  • MATLABでのシミュレーション
  • ROS2での実装とRvizでの可視化($r$と$\theta$に加えて$x$のアクチュエータを追加)
  • 実機実験と一部ログ

生成した位置と速度軌道はフィードバックに,加速度の軌道はフィードフォワードに利用し,電流入力で制御しています。 青が測定値,赤が目標値で,綺麗に軌道追従させることができました。