マイクロマウスの横滑り角の考え方

マイクロマウスの横滑り角の考え方の種類を示します。

参考にした記事は,

です.

前提として,マイクロマウスは既に一定の速度で走行しており,駆動力は転がり抵抗と釣り合っているとして$F_x=0$とおきます。 ここでは簡単のために2輪マウスについて考えます.

1. 厳密なモデル

左右の車輪の横滑り角をそれぞれ$\beta_l$,$\beta_r$とします。これらは機体の横滑り角$\beta$とトレッド$d$を用いて,

$$ \beta_l = \text{tan}^{-1}\dfrac{V\text{sin}\beta}{V\text{cos}\beta-d\omega},\ \beta_r = \text{tan}^{-1}\dfrac{V\text{sin}\beta}{V\text{cos}\beta+d\omega} $$

と表せます。 コーナリングフォース$Y$は横力$C$を用いて

$$ Y_l = C_l\text{cos}\beta_l,\ Y_r = C_r\text{cos}\beta_r $$

となります。一定の速度で走行し,駆動力が転がり抵抗と釣り合っているような状況ではMagic Formulaを用いて

$$ C_l = K\ \text{sin}[F\text{tan}^{-1}[B\beta_l-E(B\beta_l-\text{tan}^{-1}(B\beta_l))]] $$

$$ C_r = K\ \text{sin}[F\text{tan}^{-1}[B\beta_r-E(B\beta_r-\text{tan}^{-1}(B\beta_r))]] $$

と表せます.$K$,$B$,$E$,$F$は係数です.

横滑り角の運動方程式は

$$ mV(\dot\beta + \omega) = -F_x\text{sin}\beta + F_y\text{cos}\beta
$$

であり,機体にかかる力は$F_x=0$,$F_y=Y_l\text{cos}\beta_l + Y_r\text{cos}\beta_r$であることを考慮すると

$$ mV(\dot\beta + \omega) = (Y_l\text{cos}\beta_l + Y_r\text{cos}\beta_r)\text{cos}\beta
$$

より

$$ \dot\beta = \dfrac{\text{cos}\beta}{mV}(Y_l\text{cos}\beta_l + Y_r\text{cos}\beta_r)-\omega $$

となります。

2. 各車輪の横滑り角を微小として近似したモデル

厳密なモデルでは,未知パラメータが多く,また計算も複雑になります。

そこで,$\beta$,$\beta_l$,$\beta_r$が微小であるとして近似します。

$$ \beta_l\approx\dfrac{V\beta}{V-d\omega},\ \beta_r\approx\dfrac{V\beta}{V+d\omega} $$

$$ Y_l\approx C_l,\ Y_r\approx C_r $$

$$ C_l\approx K\beta_l,\ C_r\approx K\beta_r $$

運動方程式を考えると,

$$ mV(\dot\beta + \omega) = F_y $$

より

$$ \dot\beta = \dfrac{2KV}{m(V^2-d^2\omega^2)}\beta-\omega $$

となります。

3. さらに簡略化したモデル

トレッドを$d=0$とすると,

$$ \dot\beta = \dfrac{2K}{mV}\beta-\omega $$ となり,簡単な微分方程式となります。$\frac{2K}{m}$はまとめて係数として実験しながら決めるケースがよく見られます。

4. 前後の時刻の横滑り角の影響を無視する方法

前後の時刻の横滑り角の影響を無視して,とりあえず現時刻の横滑り角を$V$と$\omega$から求める方法です。

$$ 0 = \dfrac{2K}{mV}\beta-\omega $$

より

$$ \beta = \dfrac{m}{2K}V\omega $$

となります。